さよなら夏野菜・肉詰めピーマン

隣町に住む友人が野菜の大袋をくれました。夏野菜の畑じまいよ、なすは傷だらけだし大きいばかりだけど、底の方にピーマンあるから、これはいいからね、とのことでした。おお、確かに、肉厚でけっこうなピーマンだぞ。
秋が深まって肌寒くなると夏野菜にさよならします。冬にきゅうりやトマト、美味しく食べられない体だもんで。だから9月末から10月初めにかけて、晩ご飯が夏野菜メニューの連続になります。

さて立派なピーマン、肉詰めにしよう。日本の家庭料理の肉詰めピーマンは、縦割りピーマンにひき肉詰めて、油で揚げたり多めの油で揚げ焼きにしたり、が普通ですよね。うちのはスープ煮です。亡夫のレシピです。
亡夫は若い頃ドイツでしばらく暮らしていました。たまに、ちょっと変わった料理を作ってくれたもので、これもその一品です。ずっとドイツ料理だと思っていました。ところが、真面目に調べてみたところ、トルコ料理由来のレシピであることがわかりました。トルコ料理といえば世界三大料理の1つだぞ、ところで、あとの2つはな〜んだっ？

ドイツは第二次世界大戦の後、トルコと契約して労働者を受け入れていました。ガストアルバイター、招待労働者と呼ばれるトルコ人たちは、国家間の契約により待遇が保証されていたとはいえ、低賃金で働き社会の低層に位置付けられる存在であったそうです。亡夫がドイツで働いていた会社にもトルコ人の労働者がいて、おそらく低賃金で、お掃除などの下働きをしていました。亡夫はひとりのトルコ人の小母さんと仲良くなり、いろいろな話をするようになりました。小母さんは息子を大学に行かせて、差別されない環境で働かせてやるのが望みだと話していたそうです。亡夫が、日本人ってバナナみたいに黄色いのかと思った、と言われた事がある、そんな時代のことでありました。今ではどうなんだろう。ともあれ、多くのトルコ人がドイツに定住したことで、トルコの料理がドイツに広まったのなら、むしろ殺風景なドイツの食卓に花を添えることになってめでたいと思います、なんてね。

ピーマンは肩の下ですぱりと切り、スプーンてタネを取ります。暇と根性があるときは、ヘタの裏側もスプーンでちょいとけずって角をとると、つめ物との馴染みが良くなって、煮込んだときフタが取れにくくなります。でも、何やっても取れるのよ、フタ。小麦粉を少し入れて、フタを押さえて上下に振り、内側に小麦粉をまぶします。
つめ物はハンバーグ生地的なもの、挽肉にニンニクと玉ねぎのみじん切りを加えて塩、胡椒に、肉荳蔲(にくずく、ナツメグ)を入れて、粘りが出るまでよくこねます。スパイスとしてはローズマリーも美味しい。シナモンは人による。生地にはキノコやニンジンを加えても。写真の生地はニンジン入り。

詰め始める前にスパゲティ(ピーマンの数+失敗する分)本と竹串1本、出してください。あと、煮込み鍋。ピーマンを立てて並べた時に大体いっぱいになる口径で、できれば少し深い方がいいかな。鍋は詰め終わったピーマンを入れやすい場所に、斜めに据えておきましょう。
詰めます。スプーンでピーマンのお尻までしっかり詰め、上はちょっと盛り上げて、フタを押しつけてちょっと回して馴染ませます。

ヘタの脇から斜め下に竹串を通して穴を開け、スパゲティを通し、ポキンと折ります。2個目の穴は対角にあけて、スパゲティの残りを通します。ところでこの写真すごくかめむし的だなー、もう一本スパゲティ通したら6本足のツヤアオカメムシ。これでフタが止まれば良いんだけどねー、それでも取れちゃうんだ、フタ。

これを鍋に立てて入れます。以下同文、(ピーマンの数-1)回繰り返し。立てて入れるのが一番スパゲティが折れない。もちろん、ポキポキ折れやすいスパゲティじゃなくて、竹串や長い楊枝で止めれば良いんですけどね、資材がもったいないのと、スープを吸ってぽよぽよに煮えたスパゲティが、意外と美味しいもので。

あとは、ピーマンの高さの1.5-2倍くらいまで水を入れ、スープの素 2個／大さじ2 くらい加えて火にかけます。煮たったら中弱火。肉に火が通った頃にちょっとスープの味見をして、「飲んで美味しい塩気よりちょっと薄いくらい」を確認します。薄すぎるならお塩を加えましょう。飲むにはちょっとしょっぱいくらいまで煮詰めて出来上がり。半分くらい取れてるかなー、フタ。少量のスープとともにお皿に盛ってめしあがれ。

スープにはキノコ、失敗して折れたスパゲティ、敢えてマカロニなど入れてもよろしい。今回は最後にプチトマトを入れて温め、彩りにしました。つめ物余ってしまったら丸めて小麦粉まぶしておいて、スープか煮たってから入れれば肉だんご。

しょっぱいスープの残りは、冷めたところで脂をすくっておきます。無塩トマトジュースや牛乳を足して塩加減し、ジャガイモ、トマト、セロリ、ニンジン、コーン、ホウレンソウ、キャベツなどありものを加え、何食わぬ顔で次の食事に出します。挽肉の旨味にスパゲティでトロミがついていて、秋口の肌寒い日には美味しいですよ。

＊世界三大料理:中華、フレンチ、トルコ。いいけどさ、五大にしてイタリアンと日本食も加えてくれないかな？