
この花をたれが名づけていぬのふぐり
我が家では聞きなれた俳句だったのだけど 誰のかなと改めて調べてみたらウェブには出てこないの もしかしたら亡父が詠んだのかもしれない 照れ屋だったから素知らぬ顔で自分の発句を口ずさんでいたりして
青空を映したような花は 正確にはおおいぬのふぐり 明治時代にヨーロッパから渡来 東京で確認されたのは1884年あるいは87年 在来種いぬのふぐりにとって代わる形で 1919年には全国的に見られるようになったと 在来種のもも色の花にはまだ逢っていない ちなみに名前の由来となった種子のさやの形は在来いぬのふぐりでまさに犬の睾丸状 おおいぬのふぐりではハート形 とばっちりだなあ

おおいぬのふぐりの学名はVeronica persica 苗字のヴェロニカは2000年以上前に生きたある乙女の名にちなむ ところはエルサレム ゴルゴダの丘に至る坂道を十字架を担いだイエスがよろよろと登っていく 沿道には多くの見物人 ヴェロニカもその一人だった 手足に無数の擦り傷切り傷 いばらの冠は頭に食い込み イエスの憔悴した顔は血と汗と泥に汚れていた ヴェロニカは身に着けていたヴェールを取り イエスの顔をぬぐう ぬぐったヴェールを広げたヴェロニカは驚いた そこには汚れではなくて イエスの悲しみに満ちた顔が写されていたのである
フランス人の植物学者が 道端に咲く天上の青にこの乙女の名を与えた ねえ牧野先生 おそれながら 犬のたまたまはちょっと かわいそうじゃなかったかな

コメント
学名ヴェロニカは勉強になりました。素敵な教養ですね。ところで、在来種のイヌノフグリはまだあるのでしょうか?ぜひ名前の由来を見てみたいのですが。
絶滅危惧種、レッドリスト入りらしいよ。あたしもまだ見たことがありません。牧野の図鑑やウェブでふぐりは見られるよ。
私もこの青い小さな花大好きですが、そんな由来とは…(笑)
牧野先生の植物画集は、とっても素敵ですよね。高知県立牧野植物園へは是非行ってみたいです。
この記事へのトラックバックはありません。