雀の小便たご~いらがの繭
いばらき 花草虫 ~ 一覧 ~

雀の小便たご~いらがの繭

おしっこやぼろのお話が続いているところに、「小便たご」なんて、いささか気が引けたのですけど、いらがさんの繭はそう呼ばれてきたのだから仕方がありませんわね。「たご」は「担桶」、天秤棒を使って担いで運ぶ桶です。有名なのは「肥たご」野菜を食べた人間さんの糞尿が正しく畑に戻されていた時代に利用されていました。
いらがさんのお子さんは「でんき虫」、毒のとげがあって刺されるととても痛いそうです。とろりと透明感のあるきれいな子供服なんですが。繭は、わたしのカメラマンが庭木を切っていて見つけたものです。「久しぶりだ―」って、喜んでいましたの。
それというのも、カメラマンの言うには、ここ10年ばかり、庭には「広縁青刺蛾(ひろへりあおいらが)」の繭ばかりで、雀の小便たごに遭遇していなかったというのです。

向かって右がひろへりあおいらがさんの繭です。いらがさんに比べると平たくて色も地味ですわね。いらがさんはわりあい細い枝の付け根に作りますが、ひろへりさんは太い枝や幹の表面、時にはブロック塀にも作ります。
いらがさんは古くから日本の住人ですが、ひろへりさんは1921年に鹿児島で新しい虫として記録されています。関東圏までお越しになったのは1980年代で、2000年までに関東全体でお見掛けするようになったのですけれど、不思議なことに茨城県西地区では2008年までお立ち寄りがありませんでした。2008年の夏、茨城県結城市で記録されています。カメラマンの庭に現れたのもその頃だったそうです。そして、以後雀の小便たごがあまり見られなくなったように思うのですって。
国際化に伴い異国のむしさんが日本に住んでみようとはるばるお越しになりますし、温暖化の影響もあって、南方のむしさんがここ北関東に住まいを移されることが続いているようです。それでも、ひろへりさんのお引越しで一度は退いたかに見えた地元のいらがさんが、10年たってまた増えている、というのは、興味深いと思いません?

投稿者

みつばち
みつばち

コメント

  1. 株式会社Root 株式会社Root

    「雀たご」のほうのデザイン(白&茶)はどのように作っているのでしょうか?でんき虫さんが何かしら色素を出している??

    • みつばち みつばち

      いらがさんの繭は全鱗翅のうちで最も硬いのだそうです。鱗翅目のお仲間は皆さんお口から絹糸を吐かれるのですけど、糸だけではここまで硬くはなりませんわね。いらがさんは糸を吐いて繭をお作りになっている際に、肛門からカルシウムを多く含む液を排出し、これを繭の内側に塗るのだそうです。鱗翅目のお子さんの多くが、蛹になる準備の初めに白っぽい色の糞をし、以後糞をしなくなりますが、いらがさんの場合これが液状でカルシウムを含む漆喰のようなものなのでしょうか。この液は繭の糸にしみこみ外側まで白くします。地色の白はこれです。一方、黒褐色の部分はお口から吐く茶色の液を塗ることでできます。繭の中でお子さんは忙しく動き回りますから、お腹や背中のとげでこすれる部分には漆喰が着いていません。この漆喰のない部分に塗られた茶色が外に見えて、縦じまが現れます。お子さんの動きはそれぞれに違いますから、小便たごの模様もそれぞれに少しずつ違っているのですわ。

      • 株式会社Root 株式会社Root

        カルシウムとは興味深いです。ちなみにカメムシさんの外皮(というのでしょうか?)とかって結構硬いですけど、あれもカルシウムですか?いえ何が興味深いかというと、脊椎動物はカルシウムを骨に使うわけですが、昆虫さんは骨ではないが、タゴやらなにやらに使うのかと思うと。

        • みつばち みつばち

          わたしたちもカルシウムを外骨格に使っていますのよ。わたくしたち昆虫の仲間、だにさんくもさんさそりさん、お水に暮らすえびさんかにさん、みなクチクラ、みなさんご存知の「キューティクル」と同じ言葉なんですけど、と呼ばれる膜でできた外骨格をお持ちです。「キチン質」はクチクラの主成分ですが、この「キチン質」か炭酸カルシウムを含むのです。
          キチン質は主にキチンとタンパク質でできています。キチンは、水に溶けない糖の鎖です。数本の鎖がまとまり、まわりにタンパク質が巻きついて縄ができます。この、糖の鎖とタンパク質をくっつける「のり」が、炭酸カルシウムなのです。縄は、ベニヤ板のように、違う方向に重なり合い、軽くて丈夫な鎧の材料、クチクラを構成します。
          クチクラでできた殻の外側は撥水効果のある油やろうに覆われます。これを外クチクラ、キチン質部分を内クチクラといいます。どちらも、内側にある真皮細胞から分泌されます。つまり、クチクラは生きた組織ではありません。人間さんの爪や髪の毛みたいなものですわ。
          脊椎動物さんのお仲間の「内骨格」は、生きていて、日々新しい組織と入れ替わっているのですね。主成分は「リン酸カルシウム」。カルシウムの種類、役割や量は違いますけれど、どちらも「骨格」を形成していますの。なんだか不思議で、素敵ですわ。

  2. カメラマン カメラマン

    どーも、お初にお目にかかります、みつばちさまとかめむしさまのカメラマンを務めるものです。
    鱗翅目最硬!と言われるいらがの繭ですが、しばしば寄生蜂に入られ、1mm程度の穴が開いています。今年取ったものは今の所無事のようです。




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